記念日A

みすず旅館についてからというもの、みんながやけに俺に優しい。
なんだ?
きんもちわりー!

「んじゃ俺、ちーとばっかし寝るから」

そう言って自分の部屋に戻る。
奴ら何か企んでるにちげーねえ。ぜってぇそうだ。
「トラップ!」
またも奴の声で起こされる。
「来て!」
エプロン姿の奴に階下に呼び出されると、目の前にはごちそうが。
「トラップ!」

「お誕生日おめでとー!!!」
これ、全員の声な。
やっと気いついた。
そっか、俺様ってば今日、誕生日でやんの。すっかり忘れてたぜ。
パステルがダッと駆け出して来て、俺の首にぶら下がる。
「パステル!そこでキス!ですよ」
キットンの声が飛ぶ。
「もー一生、こんなことしないんだからねっ」
そう言って奴は俺の頬にキスをした。
ばーろー。
奪われたもんは奪い返す。
これ、うちのじっちゃんの口癖な。
なんか言われる前に、唇で唇に蓋をしてやった。
「んー!!!!」

ふん。本当にめでてえやつだぜ。俺と来たら。




▲Top