記念日@

「トラップー!起きて!起きてよー!」
ゆさゆさと揺さぶられて、はっと目覚める。
ったく、なんだよ。人が気持ちよく寝てるってゆーのに。
「買い物!付き合って!」
目の前でマッパーさんはニコニコと笑っていやがる。
「け、んなもん一人で行け!何で俺まで・・・」
「持ちきれないもん!ね、お願い!」
この笑顔には俺が敵わないと知っての狼藉か。
「わーった。仕方ねえな」
「やった!ありがと!!」
小躍りしてやがる。チクショー、なんか俺まで嬉しくなってきちまったじゃねえか。

みすず旅館を出ると、外はピーカンの晴れ。鼻歌でも歌いたくなっちまう陽気だ。
「いーか、お前すぐ迷うんだから、俺のそば、離れんじゃねーぞ」
「わかってますって!」
ん?いつもはここでぶーぶー言う奴が、上機嫌でニコニコしていやがる。
なんだ?なんか、気持ちわりい。

買い物はわりとすぐ終わって、パステルは両手に持ちきれないくらいの
食料品をずっしりと買い込んできた。

「んな、買い込んで今日は何の記念日だ?ったく、モノが多すぎンだよ」
憎まれ口をここぞとばかりに叩くが、奴はびくともしねえ。
「はいはーい、いったいった!」
今日のパステルは、変だ。
機嫌が良すぎる。

さらに俺を驚かすことが起こったのは、みすず旅館に戻ってからのことであった。



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